2024.07.22
【Vol.3】 アメリカの就職事情 | キャリアコンサルタントインタビュー
YOHAKU代表キャリアカウンセラーの亀井(Kamei)が世界で活躍する社会人の方々をインタビューしていきます!
第3弾はアメリカ在住でご自身も日本人留学生をサポートしていらっしゃる
グローバルキャリアコンサルタントのKenny Kanekoさんにご登壇頂きました。
Kennyさんにはキャリアカウンセラーとして、海外就労経験者として、人生の大先輩として、様々な立場からYOHAKUをサポートして頂いています。
今日は「アメリカでの就職事情(日本人が海外就職をする際に心得ておきたいこと)」をテーマにお話しいただきました。
同じキャリアカウンセラーとして、現地(アメリカ)から日本人留学生のキャリア支援をされているKennyさんのお話は大変興味深い話題ばかりでした。
これから留学を考えている方、海外就職や海外インターンを考えている方には特に参考になると思います。
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〈Kennyさんはどんな方?〉
日本で生まれ、大学院を卒業後日立製作所のソフトウェア部門でプログラミングを身につけ1994年に渡米、アメリカのシリコンバレーにある米国IT企業でプログラマーとして従事。
その後、チームマネージャーを経験し、最終的にはアメリカ本社はもとより中国、インド、ポーランド、アイルランド等の100名程のエンジニアチームの責任者を任される。
ディレクターとしてのポジションを10年ほど経験した後、グローバルキャリアコンサルタントとして独立し、企業のグローバル人材へのリーダーシップ育成とコーチングを提供。また、日本からの留学生支援も行っている。
米国移住歴は30年以上になる。
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■Kamei: 本題に入る前にKennyさんに聞いてみたいことがあります。
普段から日本人留学生と接する中で、その方々の傾向やKennyさん自身が思うことはありますか?
Kennyさん: 非常に感じることがあって、話が長くなりそうなのでできるだけ簡潔にお話すると、米国に来る日本人留学生(学生・社会人)は、留学で成功する方程式を見つけようとする方が非常に多い印象を受けています。
■Kamei: 方程式とはどういうことですか?
Kennyさん: 日本では学生から社会に出るまでの進学や就職の方法が良くも悪くも確立されているんですね。いい学校に入るためにはこんなルートがあり、良い会社に入るためにはこんな手段で就職活動をして・・・と、評価が良い道へと進むための方程式がものすごく確立されている。
一方で、アメリカの学生や社会人は方程式や画一的な答えを求めようという風潮はあまりなくて、自分が到達したいゴールがあって、そのゴールに対してどうやったらいいかを自分で考える。逆に言うと方程式がないから、自分で考えてやってみて失敗もする。失敗をすることが当たり前になっているので、周囲もそれに対して批評はしないし、本人も行動しながら自分の足で進む力がついてくる。
日本からくる留学生が、突然こういう環境に放り出されると「留学先で成功するためには」「良いインターン先を見つけるためには」とその道の通りに進めばある程度の結果は出る方程式を探し始めるんですね。
私のところに相談に来る学生さんからもそういった相談をよく受けます。
「自分でゴールを見つけて、考えて行動する=自分で答えを出す」ということがどういうことなのか、そこに気づくまでにすごく時間がかかる方が多い印象がありますね。
■Kamei: いやぁ、本題に入る前から今回のテーマの核心を突くような回答を頂いたような気がします。
私のところに相談に来る大学生さんの中にも、留学はしたいけれど、夏には帰国してインターンをして就職に備えないと日本の就活のレールに追いていかれる・・・と焦り気味の方もいらっしゃいますね。方程式というのか、就職するためのガイドラインが確立されているからこそ、何もないところから自分で考えるという機会は少ないのかもしれませんね。
だから日本から一歩出ると、はじめの頃は答え探しに戸惑ってしまう・・・
Kennyさん: そうですね、よく学生さんから聞く話で「私、日本のレールから外れちゃったんです、どうしましょう」という相談を受けるのですが、そもそもレールなんてあったの?と疑問が湧いてきます。
■Kamei: そうですね、良し悪しあると思いますが、日本にいるとどうしてもそのレールが見えてしまうので、無意識にも意識しているのかもしれませんね。
おそらく今の話が今日のテーマの結論になるとは思うのですが、もう少し具体的なこともお聞かせいただきたいと思います。
ズバリ、アメリカでインターンシップ(OPT)や就職を目指している人は仕事が見つかっているのでしょうか?
Kennyさん: まずはじめに、インターンシップ探し(OPT)については、僕が聞いた限りだとほぼ見つかっています。
ここシリコンバレー周辺では、IT企業が多いので、コンピューター関連の職種は多いですが、IT企業だからプログラマーやエンジニアじゃないとダメとうことではないのです。
例えば、プロジェクトマネジャーやプロダクトマネジャー、マーケティングやリサーチ、セールスなどの職に就く方もいます。
スタートアップの会社も比較的チャレンジしやすいと思いますよ。
■Kamei: なるほど、必ずしも技術職でないと見つからないわけではないのですね。
以前、私がサポートさせて頂いた社会人の方で、UCバークレーのエクステンションコースに通い、その後3ヶ月間だけインターンシップをした方がいたんです。その方は、日本では人事コンサル系の企業で営業として働いていて、インターン先では、自動車に搭載するカメラを開発しているスタートアップの会社でお世話になったんです。業種はこれまでと全く違いましたが、セールスとマーケティングをメイン業務として、時間があるときは資料作りをしたり、データを集計したりと何でも屋さんだったと話していました。
それもいい経験ですよね。指示された通りに動くだけじゃなくて、何をどうやったらいいかを考えて動くトレーニングにもなりますし。スタートアップこそ、模範解答は誰も持っていない。仕事を見つけ出さなきゃ進まない。
「自ら考えて動く=主体的な行動力」は、アメリカに限らず、海外で働くときには必ず必要なスキルになりますね。
■Kamei: アメリカで働く方法は複数あるとは思いますが、まずはOPTを利用してインターンを探すことに関しては、何かしらは見つかっているということですね。英語力と企業探しの準備をしっかりしておけばのお話とは思いますが・・・
“インターンは”と釘を差されましたが、例えば就労ビザ(H1B)では、別の話になるということでしょうか。
Kennyさん: その通りで、OPTの就労許可の範囲であれば、ビザスポンサーを探す必要がないので、まだインターン先を見つけやすいのですが、その枠を超えてアメリカで就労ビザをおろしてもらおうと思うと、就労ビザという高い壁が立ちはだかることになるんです。
ただ、越えられない壁ではなく、可能性はあるのですが、他国の外国人に比べてチャレンジする人が少なかったり、難しいからとはなから諦めてしまう人も多い印象です。
■Kamei: アメリカでのインターンシップや就職先探しは、皆さんどのように見つけているのでしょうか?
Kennyさん: そうですね、探し方は人によりかなり異なるのですが、主には4つあると思います。
1つ目は、気になる会社に自分のレジュメを送って、インタビューさせてもらえたら自分を売り込む方法(もっとも一般的な方法ですよね)
2つ目は、自分でネットワークを作って、情報や人脈をたどる方法
中には、興味のある会社やポジションの人と事前に繋がっておき、応募後の選考過程でリファラルとなってもらうところまでやる方もいます。こういう方法をパワータイとも呼ぶのだけど、実際にネットワークやリファラルを使った採用は良く聞きます。
3つ目は、リクルーターを活用する方法
アメリカにはリクルーター(就職先を紹介し斡旋する人)がとても多いんです。
IT関係だとリクルーターを通して就職する方はかなり多い印象です。
4つ目に、ボランティアから始める方法
この方法は留学中にやっておく必要があるのだけど、経験したことがないことでもボランティアから始めることで、その職場でのパフォーマンスが良ければ、インターンに移行するチャンスはある。
私が聞いている限りだと、留学生からOPTでインターンシップを探す方は、人脈づくりとボランティアから始める方法は、間口が広がるのではないかなと思います。
■Kamei: これぞまさに方程式のない世界での挑戦ですね。
きっとこういう時に、どの方法が一番いいですか?と聞きたくなりそうですが、色々試して自分に合う方法を見つける、それが一番の近道になりそうですね。
Kennyさん: まさにその通りで、例えば、私の性格だと、人と人脈を作るのがもすごく苦手なんですね。
こういう人は、人脈づくりをやってみるけど向いていなかったら、リクルーターやボランティアからやってみるとか。
■Kamei: なるほど。非常に参考になります。
日本から海外を目指す多くの方は、人脈も情報も少ない状態と思います。このコラムを読んでくださっている方からは「では、どうやって人脈を広げればいいの?」という声が聞こえてくのですが、ネットワーク作りのコツなどはありますでしょうか?
Kennyさん: ネットワークの作り方はかなり沢山あるんです。
アメリカは様々な職種、業種、趣味などの集まりやネットワークイベントが沢山あります。
例えば、スタートアップに興味がある人は、スタートアップワールドカップのようなものがあり、関連している人が一同に会したり、ITエンジニアの集まりがあったり、日本人会があったりと、対面やオンラインで沢山開催されています。
その多くはLinkedInなどで繋がっていくことが多くいです。ただ、誰でもいいから繋がれば良いというものでもなく、Mutual Connection(共通点)がいくつかある人、例えば、同じ大学、同じ職種、同じエリア在住などの共通項があるグループへリクエストをしていくやり方が一般的ですね。
■Kamei: すごく具体的でわかりやすいです。
小さくても行動してみることが点と点が線で繋がる可能性を増やす一歩になりますね。
Kennyさん: はい、今はオンラインでコネクションすることが楽になってきているので、まずは行動、それで上手くいかなかったら次にというマインドは必要ですね。
■Kamei: Kennyさんが日本人留学生からよく受ける質問はありますか?
Kennyさん: 主に2つあります。
1つ目が留学後の就職活動についての相談
2つ目はレジュメの書き方が多いですね。
1つ目の留学後の就職活動について、ここは非常にファンダメンタル(基本的な)な課題があると思っています。
日本の感覚だと、仕事探し=カンパニー(会社)を見つけるというイメージのようですが、アメリカではジョブ(仕事)を見つけるというイメージに近いんです。
会社に就職するという感覚よりも、やりたいことがその会社にあるからそのジョブやポジションに就くという感覚なんです。
例えば「私はマイクロソフトに入りたい」と言ったところで、その中で何をやりたいか、何が出来るかがしっかりと伝えられなければ、仕事を獲得するのはかなり難しい。
■Kamei: なるほど、究極のジョブ型採用ということですね。
日本では、中途採用者にはジョブ型採用が広がりつつありますが、新卒入社の多くの若者は、「仕事として何がしたいか」よりも「どの会社に就職したいか」の方が重視されているように思います。
日本は、数年、数十年かけて一つの会社で育て上げる文化がありますし、この部署でこんな仕事がしたいと主張しても、定期的にジョブローテーションがある会社もあるので、日本ではやりたい仕事(ジョブ)をやり続けることが難しい環境にあるとも言えるかもしれませんね。
だから、「どの会社に就職するか」という視点に偏ってしまう。
大事なのは、日本とアメリカで仕事探しにおいてのベースの考え方が違うことを理解して挑むことかもしれませんね。
Kennyさん: その通りで、アメリカの場合は、ほぼジョブ型。
会社に所属して何年かかけて成長させてもらおうという考えの人も少ないですし、会社側もそれを望んでいないですね。
■Kamei: では、2つ目のレジュメの書き方についてはどのような課題があるとお考えですか?
Kennyさん: 日本人留学生のレジュメの添削行うと、日本の履歴書を英語にしただけの人がすごく多いんですね。
レジュメを書く目的は「インタビューに呼んでもらうため」。
レジュメには書き方や決まったフォーマットなどはなく、とにかくこの人の話を聞いてみたいと思わせられるような見せ方、内容にすることが大事なんです。
■Kamei: 日本の履歴書を英語にしただけでは、その人の魅力が伝わらないということですね。レジュメを作成する際のコツなどはありますか?
Kennyさん: そうですね、アメリカと日本の違いで一つ思うことがあります。
採用側の傾向として、アメリカは日本人のようにこの人の歴史をすべて見て想像して、この人はこんな人間なのかな・・・というふうには考えてくれない。
つまり、「私は1+1+1=3」なので、1+1+1の部分を細く書いて、3を想像してください、というのが日本っぽいスタイル。
だけど、アメリカの場合は最初に「私は3なんです」と主張するところから始まり、そこから根拠を盛り込む。
やはりここでも大事なのは、「自己認識」ですね。
■Kamei: なるほど、とてもわかりやすいです。
自己認識というのは、自分はどういう人間で、どういう専門性があって、何が得意で、何をやりたいかということを理解しておくということですね。
Kennyさん: その通りです。できればアメリカに来る前からやっておいた方がいいと思います。
その時点で完璧じゃなくてもよくて、自分のことを整理しておくことで、過去の実績が足りないと思えば、それを保管するために留学中にボランティアをしたり、プロジェクトに参加するとか、過去の実績を膨らませることも出来るんですよね。
留学前から全て完全である必要はないけど、インターン(仕事)探しの直前で始めていては、肉付けしようがないわけです。
■Kamei: この部分、私もすごく共感します。
YOHAKUでも留学開始前に自分のことを棚卸しするためのキャリアセッションを提供しているのですが、現時点で考える自分の価値観や強みを認識していくと、自ずと「じゃあ、留学開始までにこんなことをやっておこう」「留学中はこんなことを意識していくとプラスになりそうだ」とか、次なる目標が見えてくる方も多いんですね。
大事なのは「今の自分を知ろうとする」ことかなと思っています。
個人的には、インターンや仕事探しのような表面的なことのためだけじゃなく、自分のキャリア(進む道)に満足感や納得感をもたらすエッセンスにもなるのではないかなと思っています。
Kennyさん: そうですね。
ある程度自分のことが棚卸しできたら、自分のサブタイトルみたいな感じで、自分のことを表す一文を考えてみるのもいいかもしれませんね。
サブタイトルを考えようとすると、自分の人生を考え始めるでしょ?そうすると、過去のことや今の気持ち、今後やりたいことも全て考え始めるので。
■Kamei: 最後に、これから海外留学を目指す方へのメッセージをお願いします。
Kennyさん: そうですね、一言で伝えるのは難しいのですが、やっぱり「自分が何をやりたいか」という軸みたいなものを持つことでしょうか。
自分がやりたいことを探って、やってみて、結果どうなるかはわからないけど、アメリカは誰もそれを邪魔しない。
日本だと、人と話すのが苦手だったとしたら、それをどうにか克服しよう、平均点までは持っていこうという周囲の圧のようなものを感じてしまうことがあるのだけど、こっちでは、人と話すのが苦手だったら、それをやらないでどうにかすればいいという発想。
英語ができなくたって、人と話すのが苦手だって、全然問題ない。
大事なのは、自分の内面的な思いの部分。
それが具体的でなくてもいいと思うんです。
例えば、
お金持ちになりたい
他の人と違うことをやりたい
日本以外の沢山の人と繋がりたい
こんな感じで、具体的でなくてもいいと思うので、まずはどうしたいかを考えてみてほしいなと思います。
■Kamei: ありがとうございます。内面から湧き出る欲求や気持ちに目を向けてみるということですね。インタビュー冒頭で仰っていた「方程式を探すのではなく、自分なりのゴールを探る」まさにこの言葉に繋がるなぁと改めて感じました。
私から加えて伝えたいこととしては、自分のやりたいことってそんな簡単に見つからないんですよね。何度考えても1つに絞るなんてなかなか難しい。キャリアセッションでもよく伝えていることなのですが、やりたいことも自分の価値観も強みもその時々で変わる可能性があるもの。
だから、ひとまず今の自分だったらこうかな?と少し気楽に考えてみて、どこかの時点で振り返ってみて、変わったと思ったら変えていけばいい。
そんなふうに考えてみると自分のやりたいことや自分なりのゴールが見えてくるのではないかなと思います。
Kennyさん: まさにそうなんですよね。
これやりたいな、こうなれたらいいなと思ったら、まずはやってみる。やれるだけやってみて、ちょっと違うなと思ったら、また別の道に進めばいいわけなので。
■Kamei: そうですね、やってみると見えてくる景色が変わったりしますからね。そこでまた軌道修正すればよしですね。
日本の学生さんや社会人の方でも、1年くらい留学を経験し、帰ってくると半数くらいの方が、留学前にやりたいと思っていたことと違うことに興味を持っていたり、考え方が変わっていたりしますね。留学前後で全く同じことを言う方は稀なように思います。
Kennyさん: 何が良いか悪いかは別として、海外に行くと少なからず何かしらの影響を受ける人は多いですね。視野も広がっちゃう。
いろんな影響を受けながら、自分の内側から出る思いとかやりたいことを是非模索してほしいなと思います。
■Kamei: Kennyさん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
今回はアメリカの就職事情というテーマでお話を伺いましたが、海外での職探しという点においては、アメリカに限らず、カナダやイギリス、オーストラリアなど、どの国でも通ずる考え方ではないかと思います。
例えば、ワーキングホリデーを利用して働き先を見つける際にも同じようなマインドが必要と言えます。
当インタビュー企画が海外留学やインターンシップ、アルバイト探しを検討している方々にとって、一歩踏み出す励みとなれば嬉しく思います!
〜カウンセラーからのMessage〜
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✔ 海外留学か就職(転職)をするか迷っている方
✔ 海外留学でスキルアップして今後のキャリアに活かせる留学を模索している方
✔ 自分のキャリアについての棚卸しをしたい方
このようなお気持ちを抱く社会人の方や学生さんからのご相談を多く頂いております。
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